1985年8月12日に発生した日航ジャンボ機墜落事故から今年で39年になります。
事故直後からいろいろな噂や偽情報が飛び交っていた記憶があります。
事故調査委員会が作成した事故調査報告書に対し、「懐疑論」「陰謀論」に類する書籍やネット情報が今でも多数出回っており、減る気配はなさそうです。
新たな事実が明らかになっても、真実は別にあるということが主張されると議論は果てしなく続くでしょう。
そこで、日航機墜落事故をめぐる論点はなにか?につき、主なポイント3つを調査し、著者の疑問点などを整理してみました。
論点整理の方法は?
公的な事故調査委員会の公表内容によりそのポイントを確認しました。ついで対応する懐疑論・陰謀論の論点を取り出し、疑問点などをまとめてみました。
今回、関連する書籍などでは「真実を暴く」などと表現され、懐疑論か陰謀論かよく分からないので懐疑論・陰謀論と表現。
・日航機墜落事故の全体像の把握はウイキペディア「日本航空123便墜落事故」によります。
この中で引用された事故調査委員会の公表内容(事故調見解)について、重要なものを原本(PDF)でチェックしました。
対応する懐疑論・陰謀論の論点は、森永卓郎著『書いてはいけない』の第3章「日航123便はなぜ墜落したのか」
(以下「森永氏著書」)がまとまっており主に参考にしました。
この森永氏著書では、多数の日航機墜落事故関連本を出されている青木透子氏の説も引用されています。
論点のポイントは?
日航機墜落事故に関する論点は事故から39年経過しており、当時の記憶も薄れて、その論点がより複雑化しているようです。
主に事故調の報告書と森永氏著書を比較することで、論点のポイントをまとめることにしました。
次の3つを取り上げました。
●圧力隔壁の破壊は事故のトリガーだったのか?
●公開されたボイスレコーダーの音声データは正しいのか?
●なぜ墜落現場の特定が大幅に遅れたのか?
圧力隔壁の破壊は事故のトリガーだったのか?
・日航機墜落のおおきな要因として後方尾翼の破壊により、操縦がアンコントロールになったことが挙げられ、なぜ尾翼が破壊したのかに見解の相違がみられます。
両者の見解を抜粋してみました。
事故調の見解:専門用語は省いています。
(1)後部圧力隔壁の破壊によって流出した客室与圧空気の一部が垂直尾翼内に流れこみ、その内圧が上昇。
(2)内圧が約4psi上昇した後、内部構造物がつぎつぎに破壊され、外板の剥離、方向舵の脱落、操縦索系統及び系統油圧配管の損壊をもたらした。
森永氏著書での指摘:
「事故調は、前向きの異常外力(最大値約11トン)及び下向きの異常圧力が必要なことが数値計算からわかった。
つまり、事故調自体が、尾翼に後ろから何かが追突して、それが尾翼の破壊につながった可能性が高いことを認めていたのだ。
…航空事故調査報告書の別冊には、「異常外力の着力点」が図示されているのだ。
図の黒丸のところに、なんらかの飛翔体が衝突し、それが原因で尾翼後部の大部分が吹き飛び、油圧系統を破壊した。
そして、この尾翼の破壊によって、与圧された機内の空気が緩やかに噴出した。そう考えれば、すべてのつじつまが合うのだ。
コックピット内の機長、副操縦士は酸素マスクをしないで会話している。
飛翔体は非炸薬のミサイルか無人標的機?
別冊の図面を示します。
両者間の見解の違いは、事故調がまず圧力隔壁の破壊有りきの結論に対し、それはおかしい、まず尾翼の破壊があってから圧力隔壁が破壊したと主張していることです。
・データ上の数値・言葉を確認してみました。
事故調:「内圧が約4psi上昇した後、破壊が始まった」とあり、4psiはどの程度の圧力なのか調べてみました。
1 psi(ポンド毎平方インチ) = 6.89476 kPa(キロパスカル)
これをもとに、4 psi を kPa に変換すると:4 psi は約 27.58kPa です。
この数字が具体的にどの程度は具体的にイメージできませんね
この空気圧を自動車のタイヤの空気圧と比較してみました。
一般的な車のタイヤの空気圧は 30 psi から 35 psi(約 207 kPa から 241 kPa)程度です。このことから比較すると、4 psi(27.58 kPa)は通常の車のタイヤの空気圧の約 1/8 から 1/9 ほどの値になります。
思ったより低い圧力ですね これで飛行機の大きな構造体を破壊できるとは!
実際に破壊再現試験をやっているので間違いはないのでしょうけど。
「異常外力の着力点」を調査:
「異常外力の着力点」
「異常外力の着力点」について:そもそも「外力」とは、物体に対して外部から作用する力のことを指します。物理的な定義では、物体の外部から加わる力であり、その物体の運動状態や変形を変える原因です。
事故調報告書は異常外力を破壊部分からの噴流の反力あるいは形状変化による抗力の増加としています。
また、破壊のメカニズムを裏付けるために数値解析をおこない、付図の説明では「(e)異常外力LNGF(水平成分)、VRTF(垂直成分)の着力点は付録の付図―1に記録した。」とあります。
この着力点はあくまで数値計算による解析のための仮定のようです。
事故調の報告書は専門用語や略号、記号が多く使われており、門外漢には理解するるのが難しく感じます。
この図面の言葉一つでも解釈が異なるということから素人でもわかるような解説書があると助かるのですが…
公開されたボイスレコーダーの音声データ等は正しいのか?
ウイキペディアの関連記事より:
2000年(平成12年)7月頃には、事故機のコックピットボイスレコーダー (CVR:Cockpit Voice Recorder、操縦室音声記録装置)を再録したカセットテープがマスメディアに流出した。
8月8日のTBS(JNN)系列の夕方のニュース番組『ニュースの森』で放送されたのを皮切りに、テレビ各局で相次いで放送され、墜落事故から15年を経て一般人が墜落直前のコックピットの様子を初めて知ることとなった。
森永氏著書での指摘:
「自衛隊機のミサイル攻撃が墜落原因」までは信じられないという人もいるだろうし、全て「陰謀論」だと切って捨てる人がいるかもしれない。
だが、じつはこの見立ての大部分はたった一つのことで正否が検証できるのだ。
それはブラックボックスの生データを公開することだ。
…フライトレーダの生データがあれば墜落までの完全な経路がわかるし、パイロットがどのような操縦をしていたのか、機体がどのような挙動をしていたのかすべてわかる。
生データの開示については裁判に継続しています。
2021年(令和3年)3月26日、遺族の吉備素子さんらは、JALに対しボイスレコーダー・フライトレコーダーの生データの開示を求め東京地裁へ提訴。
2022年(令和4年)10月、東京地裁は1991年までに和解が成立しているとして原告の要求を棄却した。
原告は控訴し、控訴審は2023年(令和5年)6月1日に判決が言い渡されたが棄却された。
現在、裁判は最高裁に上告されて審理が継続しています。
現在継続中の裁判で生データの開示が認められると、森永氏が言われるように状況がよりはっきりするかもしれませんが、和解が成立していることから厳しいのでは?
生データ自体は録音時間が短く、消去されている部分もあるとの事(事故調)。
たとえ公開されても新たな疑問が出るかもしれません。
なぜ墜落現場の特定が大幅に遅れたのか?
事故調:墜落地点及び機体の確認について
防衛庁機によって19時21分に墜落現場と思われる場所に炎が確認され、直ちに墜落地点及び機体確認のための捜索が開始され、8月13日早朝に防衛庁機及び長野県警機によって墜落地点、機体が確認された。
墜落地点は、樹木の密生した山岳の重畳した地域にあり、夜間の捜索ということもあり、地点確認までに時間を要したことはやむを得なかったものと考えられる。
映画「クライマーズ・ハイ」では、堺雅人演じる新聞記者が連絡手段がないため、見知らぬ民家に入り込み固定電話で必死に連絡しているシーンを思い出しました。
当時の情報連絡手段は今からみると極めてお粗末だったんですね
森永氏著書での指摘:
当初から私が抱えていた大きな疑問は、墜落現場の特定が大幅に遅れたことだ。
……米軍も、自衛隊も、政府も墜落直後に現場を特定していたのだ。…
さらに驚いたのは、米軍キャンプ座間から救援ヘリを飛ばして、隊員を現地にロープで降ろそうとしたときに、日本政府から救援中止の要請が入ったという事実だ。
…私には日本政府にもっと深い事情があったとしか思えないのだ。
事故調の「捜索の遅れはやむを得なかった」との表現はなにか他人事な表現ですね
森山氏のいわれるように情報の扱いに駆け引きがあった可能性は否定できないでしょう。
情報の記録がきちんと残っていればいいですが
自衛隊、米軍、政府がからんでいることから、今後も陰謀論の恰好のターゲットになると思われます。
補足
・論点から外れますが、事故機の運航乗務員であった佐々木副操縦士の知り合いの方から数年前に御巣鷹山に慰霊登山した際の運航乗務員の供養塔の写真を頂きました。
写真では中央が高浜機長、左が佐々木副操縦士、右が福田航空機関士の供養塔です。
コックピット内の音声記録を聞くたび、高浜機長はじめ運航乗務員の最後まであきらめない必死の操作が分かり心が震えます。
この3名の運航乗務員のほか、亡くなった客室乗務員、乗客の皆様のご冥福をお祈りいたします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
日航ジャンボ機墜落事故から今年で39年になりますが、いまだ解明できていない謎があり、陰謀論も多いですね
今回、力不足ですが、筆者なりの視点で論点をまとめてみました。
ご覧いただきありがとうございました。
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